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医療事故情報
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公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業
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報告年 | 発生曜日 | 曜日区分 | 発生時間帯 |
2012 | 水曜日 | 平日 | 22:00〜23:59 |
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医療の実施の有無 | 事故の治療の程度 | 事故の程度 |
実施あり | 濃厚な治療 | 障害残存の可能性がある(高い) |
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事故の概要 | 発生場面 |
事故の内容
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治療・処置 | 実施 | その他の治療・処置の実施に関する内容 食道誤挿管 |
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発生場所(複数回答可) | 関連診療科(複数回答可) | 患者の数 | 直前の患者の状態(複数回答可) |
ICU
| その他 救命救急科
| 入院 1人 30歳代
(女性)
| 意識障害
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当事者 | 当事者職種 | 職種経験 | 当事者部署配属期間 | 直前1週間の 当直・夜勤回数 | 勤務形態 | 直前1週間 の勤務時間 | 専門医・認定医及びその他の 医療従事者の専門・認定資格 |
1人
| 医師 | 23年2ヶ月 | 23年2ヶ月 | 2回 | その他 当直 | 50 | 救急専門医 |
2人
| 医師 | 2年2ヶ月 | 2年2ヶ月 | 2回 | その他 当直 | 55 | |
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特に報告を求める事例 | 発見者 | 治療・処置の種類 |
本事例は選択肢には該当しない | 当事者本人 | 気管挿管 |
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医療材料・諸物品等1 |
【販売名】 0
【製造販売業者】 0
【購入年月】 0
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事故調査委員会設置の有無 | 発生要因(複数回答可) |
内部調査委員会設置(予定も含む) | 確認を怠った 観察を怠った 判断を誤った 通常とは異なる身体的条件下にあった
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事例概要 |
【実施した医療行為の目的】 自殺企図による塩化カルシウムの服用による高度の脱水と代謝性アシドートスに対する輸液負荷とそれに伴う肺鬱血による酸素化能の低下にて人工呼吸器管理を行う事を目的とした。
【事故の内容】 事故の経過
11時59分、急性薬物中毒(塩化カルシウム服用)にて、当院救急搬送されICU入室となった患者。21時40分、塩化カルシウムの摂取による呼吸循環不全とPao2 71mmhg(酸素10L/min)の悪化を来したために人工呼吸器管理を行う方針とした。指導医の監視下にて、2年目研修医が気管挿管施行することとした。Preoxygenation後に22時14分、プロポフォール100mgとエスラックス50mg投与し22時15分、気管挿管した。気管挿管後に両側呼吸音を確認し、用手換気による呼気の戻りを確認、呼気の気管チューブのコネクターの曇りを確認、酸素飽和度が90%改善により、気管に挿管されたと判断した。22時17分、用手換気にて酸素飽和度90%台まで上昇したが、22時23分、酸素飽和度低下あり、用手換気を続けるが改善見られず、22時24分、PEA(無脈性電気活動)となり、胸骨圧迫・アドレナリンの投与を行ったが心拍再開は得られなかった。低酸素による心停止ではないかと考え、22時30分、喉頭展開し気管挿管チューブを確認したところ、食道に挿管されていたため、直ちに気管に挿管し直した。その間約12分間程度を要した。22時33分、心拍再開するものの、脈なしVTまたVFを繰り返し、除細動4回とアンカロン125mg投与を行い、22時46分、心拍再開を得た。心停止から心拍再開までは約20分程度を要した。
※入室時より高度アシドーシス状態(PH 7.099、 BE −15.3)であり、輸液負荷を行っても改善は得られず、CK の値も5109と高値であったことから、筋組織の破壊が進行していることも関与し、心拍再開に時間を要したと思われる。
対応
・心停止による脳虚血にて高度の脳障害を来たす可能性があり、家族に対して事実を報告した。
・心停止による脳虚血に対しては脳低体温療法を開始した。
・塩化カルシウムによる高度の脱水とアシドーシス(PH 7.163、 BE −16.7)、肺の器質的変化と輸液負荷による肺水腫をきたしたために人工呼吸器管理としたが、食道挿管により心停止に陥った。循環不全に関してはPCPSを開始し、アシドーシスに対しては血液透析を持続的に行うが、塩化カルシウム服用状況もあり全身状態の改善にはかなりの困難を伴う。
患者家族の要求
意識障害の改善と塩化カルシウムによるショック状態の改善
【事故の背景要因の概要】 ・確認を怠った。
・判断を誤った。
・通常とは異なる身体的条件下にあった(夜勤当直中) 。
・呼気終末二酸化炭酸ガス濃度モニターは、人工呼吸器側に装着してあった。呼吸器に接続する前にPEAになったため、誤挿管に気付けなかった。
・塩化カルシウム服用により、胃・十二指腸の粘膜浮腫が著明であり、胃の狭少化により、呼気がバックに戻ったと思われた。
【改善策】 ・気管挿管にて気管内への留置の確認は胸郭の挙上と両側呼吸音・胃部の聴診、呼気の戻りの確認ではあるが、今回の事例のように胃粘膜腫脹による胃の内腔の狭小化により、呼気がいかにも戻ってきた状況を作り出し、腹部の押し上げによる両側肺が押し上げられ、呼吸音として聴取されたと思われる。その為、気管挿管直後に、聴診や胸郭の挙上、呼気の戻りを確認するだけではなく、呼気終末二酸化炭酸ガス濃度モニターを人工呼吸器に装着のものとは別に単体で使用し確認することを徹底し、正確に気管内に挿管していることを確認する。
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