医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例ID報告年発生曜日曜日区分発生した時間帯
AE04813D62C4B5E6F2025金曜日平日体制10:00〜11:59
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者区分
病室
消化器内科
入院
事例発生後、追加的に行った治療の程度健康被害の程度
治療なし障害なし
患者年代性別疾患名事例の誘因となった患者の状態(複数回答可)
1人 80歳代男性【事例に直接関連する】2型糖尿病
非代償性アルコール性肝硬変
食道静脈瘤
肝性腹水
肝門部腫瘍(疑)
特記事項なし
2人 70歳代男性前立腺癌
【事例に直接関連する】肝内胆管癌(疑)
パーキンソン病
認知症・健忘
職員職種職種経験年数部署配属期間勤務状況専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 准看護師32年1ヶ月32年1ヶ月2交代制
発見者
事例に関わった職員 1人目
事例の概要事例の分類発生場面(不具合の発端となった場面)種類
薬剤患者間違い投与注射薬
関連医薬品1 医療機器等1 その他の材料・物品1
【販売名】 インスリンリスプロBS注ソロスターHU「サノフィ」(300単位)
【製造販売業者名】 サノフィ
【販売名】 
【製造販売業者名】 
【販売名】 
【製造販売業者名】 
発生要因(複数回答可)事故調査委員会
【①事例に関わった職員の要因】
確認漏れ・不足
【②①の背景】
知識不足
慣れ
繁忙/タイムプレッシャー
医薬品
教育・訓練
手順・ルール
その他 認知機能の低下
【新規に委員会を設置(予定も含む)】内部委員のみ
事例概要
【事例の詳細】
11時35分頃 看護師は、患者Xに定期打ちになっているインスリンリスプロを4単位皮下注射しようとナースステーションで準備した。インスリンリスプロはチェック用紙に基づいて他の看護師とともに4単位であることをダブルチェックした。看護師は、その時すでに患者Yのことを患者Xだとして頭にイメージしていた。
11時40分 看護師は、ペン型インスリン注入器と消毒、チェック用紙をトレイに入れて患者Yの部屋に持参した。入室時に患者名は確認していない。ペン型インスリン注入器に名前が書いてあるシールが貼ってあったが、目の前にいる患者の名前を確認せずにインスリンリスプロを皮下注射した。その後顔を見ると10時に血糖を測定した患者ではないと思った。ベッドネームで名前を確認すると違う氏名の患者Yだった。ペン型インスリン注入器のキャップに書いてある名前とも違うことに気付き、誤った患者に注射したと気付いた。誤ってインスリンを注射された患者Yはインスリン投与の必要がない患者であった。
11時45分 看護師は、本来インスリンを皮下注射すべき患者Xに投与しなければならないと思い、患者Yに使用したペン型インスリン注入器に新しい針をセットし、患者Xにインスリンリスプロ4単位を皮下注射した。看護師は、看護リーダーと薬剤師に、誤った患者にインスリンリスプロ4単位を皮下注射したことと、本来皮下注射すべき患者にもカートリッジを交換せずペン型インスリン注入器を使用しインスリンリスプロ4単位を皮下注射したことを報告した。その際、薬剤師から同一のペン型インスリン注入器を使用したので逆血の可能性があることの指摘を受け、ペン型インスリン注入器は別の患者に使用してはいけないことを知った。薬剤師は、病院長に誤った患者にインスリンを皮下注したこと、2人の患者にカートリッジを交換せず一つのペン型インスリン注入器を使用したことを報告した。病院長は、患者Yの血糖測定と経過観察を指示した。
11時50分 看護師は、患者Yに誤ってインスリンを皮下注射したことを謝罪し昼食の摂取を促した。食事意欲がない様子であったので介助を行い、主食8割、副食4割摂取した。容態に変化はなかった。看護リーダーは患者Xの主治医に、誤って他患者に使用したペン型インスリン注入器のカートリッジを交換せずインスリンリスプロ4単位を皮下注射したことを報告した。
12時00分、12時30分、13時30分、15時30分 患者Yの血糖を測定し意識レベル、冷や汗や動悸、頭痛などの症状がないか確認した。低血糖にはならず交感神経症状や中枢神経症状も起きなかった。
15時30分 患者Yに、定期処方されているラコール(栄養補給を目的とした経腸用液)を介助して全量摂取。低血糖にはならず交感神経症状や中枢神経症状も起きなかった。
病棟師長が患者Yに、患者Xが使用していたペン型インスリン注入器を使用しインスリンを皮下注射したので、カートリッジを介し感染を起こす可能性があることを説明し同意書にサインを得てから感染症の採血を行った。
15時40分 病棟師長が患者Xに、患者Xが使用しているペン型インスリン注入器を使用し患者Yにインスリンを皮下注射したこと、同じペン型インスリン注入器を使ってカートリッジを交換せず患者Xにインスリンを皮下注射したのでカートリッジを介し感染を起こす可能性があることを説明し同意書にサインを得てから感染症の採血を行った。
16時40分 患者Yと患者XのHIV−1、2抗原・抗体定性の結果が出た。2人とも陰性であった。
16時49分 病棟師長が患者Yのキーパーソンである家族へ、インスリンの事項、患者Yに説明と同意を得て感染症検査を行ったこと、HIV検査陰性であったことついて電話で報告した。「いつもご迷惑かけて申し訳ありません。」との返事があった。
21時00分 患者Yの血糖を測定し意識レベル、冷や汗や動悸、頭痛などの症状がないか確認した。低血糖にはならず交感神経症状や中枢神経症状も起きなかった。
翌日8時24分 病棟師長が患者Xのキーパーソンである家族へ、インスリンの事項、患者Xに説明と同意を得て感染症検査を行ったこと、HIV検査陰性であったことについて電話で報告し、謝罪した。
【事例の背景・要因】
1.看護師は、患者の氏名を確認せずに皮下注射を行った。
患者Yは70歳代、患者Xは80歳代で風貌がよく似ていた。看護師は当該患者2名を受け持っており朝の検温時に顔を見て「この方がこの人だ」と考え、患者を覚えたと思った。また、2人の患者の部屋は一つ空けた隣の部屋で造りが似ており「スタッフステーションからこの方面の部屋では定時になったらインスリンを打たなければならない」と考えただけで、部屋番号を見て認識していなかった。
当院で注射実施前に患者の氏名を確認する方法として、病室の入口のネームボードを見る、ベッドネームを見る、患者にフルネームを名乗ってもらうがある。看護師はペン型インスリン注入器を準備する段階で患者Yのことを患者Xとして頭にイメージして、あの部屋のあの方で間違いないと思い込んでおり3つとも行っていない。また、皮下注射実施前には、ペン型インスリン注入器に書いてある氏名とチェック用紙に書いてある氏名とも照合するべきであったが行わなかった。
※インスリンリスプロは他院が処方したものを持参薬として使用中であった。そのため処方箋はない。
※チェック用紙とは、部屋番号、患者氏名、薬剤名、月日、時間、単位数をチェックリスト形式で看護師が手書きで起こす用紙。皮下注射をした看護師は、実施欄にサインする。
2.看護師は、ペン型インスリン注入器は個人専用として使用する器具であることの知識がなかった。
「ペン型インスリン注入器等の取扱いに係る注意喚起について」の知識が不足していたので、看護師はためらうことなく、先端の針のみを交換して別の患者に皮下注射してしまった。血液がカートリッジ内に逆流する可能性を含めた構造の理解や取扱い方法が周知されていなかった。
【再発防止策】
1.ペン型インスリン注入器は処方された患者以外に使用してはいけないことの周知徹底。
方法:ペン型インスリン注入器を保管する場所へ掲示。
2.ペン型インスリン注入器についての学習。
対象:看護師全員。
方法:薬剤師による学習会。
評価:患者以外に使用してはいけない理由についてテスト。
3.患者誤認防止についての指導の強化。
対象:全職員。
方法:この事例についてのリスクマネージャーへの報告と検討会。
患者誤認防止について院内集合研修。
患者確認防止策が実施されているかのラウンドを行い指導。
評価:各部署のリスクマネージャーによるラウンド結果の分析。