医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDADBE0486C9D8CF2DC
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2018火曜日平日12:00〜13:59
医療の実施の有無事故の治療の程度事故の程度
実施あり濃厚な治療死亡
事故の概要発生場面 事故の内容
治療・処置実施その他の治療・処置の実施に関する内容 術中の大量出血
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
手術室
整形外科
入院
1人
70歳代 (女性)
下肢障害
歩行障害
疾患名腰椎変性後側弯症
左総腸骨動脈損傷
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師19年11ヶ月10年5ヶ月0回その他 当直制16日本脊椎脊髄外科学会指導医
日本整形外科学会専門医
特に報告を求める事例発見者治療・処置の種類
本事例は選択肢には該当しない当事者本人その他の手術 側弯症手術
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
医療材料・諸物品等1
【販売名】 腰椎前側方進入椎体間固定術用器械
【製造販売業者】 メドトロニック ニューベイシブ
【購入年月】 借用器械
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
外部調査委員会設置(予定も含む)患者への説明が不十分であった(怠った)
患者側
教育・訓練
ルールの不備
事例概要
【実施した医療行為の目的】
70歳代女性。腰椎変性後側弯症にて手術目的にて入院となる。
【事故の内容】
手術当日9:25 麻酔開始、体位セッティング(右側臥位)。
10:24 手術開始、腰椎側方進入椎体固定(腰椎2/3)左側方進入にて施行した。
12:30 腰椎前側方進入椎体間固定術(腰椎3/4)を開始する。
12:45 腰椎前側方進入椎体間固定術を施行中、出血量増加。血管損傷の疑いにて外科医に応援要請を行う。出血と同時に輸血(自己血、回収血、日赤血)を実施した。
13:00 外科医師にて出血部位を検索するが、出血点は不明であった。
13:38 主治医よりA病院の血管外科医師に相談電話をする。(この時点では出血部位が不明であったため、血管外科医師へは出血に対する緊急の相談をした。その際にA病院の院長から血管外科医師の派遣を提案された。)血管外科医師の派遣が決定した。医師の到着時間を確認した。
14:10 家族へ状況説明を行う(出血増加、出血源不明)。
14:50 止血を行うが、やはり出血点不明、ガーゼパッキングにて止血し仮閉創し、造影CTの施行を決定する。主治医により家族へ説明を行う。
15:10 造影CT施行。血管縫合に必要な手術器具や縫合糸等が当院のものだけでは不十分な可能性もあったため、当院院長よりB病院院長へ電話にて物品等の借用を依頼した。
15:34 造影CTにて出血点が左総腸骨動脈であることが判明。手術室再入室、止血術の準備を行う。手術室に戻るが、患者の一般状態はかなり不安定となり、輸血を実施しながら電解質補正等を行った。
16:00 血管内治療の必要性も考え、近隣の施設を検討、C病院の循環器内科に相談し、血管内治療が必要な場合は転院搬送をお願いする可能性があることを伝えた。副院長がB病院に物品借用に向かう。
16:10 A病院の血管外科医師が到着する。院長より画像を見せ現状の説明を行った。
16:30 A病院血管外科医師と、B病院心臓血管外科医師が直接電話でやり取りをし、必要物品を指示、副院長がB病院手術室で必要器具を借り、当院に運んだ。
16:47 止血術開始。左総腸骨動脈を縫合した。
16:54 B病院より器械、縫合糸等が到着。玄関前で医療安全管理係長が受け取り、すぐに手術室に搬入した(最終的に使用したものは縫合糸のみ)。
17:35 血管縫合終了(血圧上昇)。A病院の血管外科医師が電話にてA病院院長に状況の報告を行う。A病院院長より、術後管理は集中治療が必要であるため、救命センターに搬送すべきとアドバイスあり、A病院院長がD病院の救命センターに搬送を直接依頼した。
18:05 止血術終了。右側臥位での手術であったため右側後腹膜腔に血腫が貯留。血腫除去が必要と判断される。体位変換(右側臥位)し、当院外科医にて開腹血腫除去術を施行する。
19:15 血腫除去終了、閉腹となる。インアウトバランス、使用材料の確認、術中記録の整備等を行いながら搬送準備を整える。
20:40 救急搬送にD病院へ搬送となる(同乗主治医、臨床工学士)。
4日後の20:00(推定)、死亡診定。D病院から所轄警察に通報となる。
【事故の背景要因の概要】
術中(出血部位の同定のために実施した術中造影CT結果)のCT画像で、再度出血部位と、損傷した動脈の位置を確認した。術中造影CT上でも血管の石灰化は認められていため、術前単純CTと再度比較を行った。術前単純CTでも破綻した部位に著明な石灰化が認められ、その位置と今回、術中に破綻した総腸骨動脈の位置が両方の画像上ではほぼ一致していた。損傷していた左総腸骨動脈は、手術前に高度の後側弯に伴って90度以上屈曲をしていた部分であった。かつ、石灰化した大きなプラークで覆われていた箇所で、術中造影CTの3D画像では、他の椎間の椎体固定術を施行したことで脊椎が矯正に伴って持ち上がり、術前にあった約90度の屈曲が殆ど無くなり、石灰化した大きなプラークで覆われていた箇所から出血していたことが推測されている。高度の後側弯を伴う患者の立位・歩行時に、左総腸骨動脈も90度以上屈曲を繰り返し、長期に負荷がかかり続け、血管が脆弱になっていた可能性も考えられる。また、そこに出来た石灰化した大きなプラーク部分での癒着もあった可能性も考えられる。この様な症例に対して、前方から矯正をして脊椎を持ち上げるという操作そのものが、今回の様なことを惹起する可能性がある。また、モデルを使ってレトラクターを設置する実験等を行った結果、現時点の判断としては、出血部位との位置関係等から推測し、レトラクターによる操作上の問題は無かった可能性が極めて高いと考えている。
【改善策】
手術を再開するにあたっての対策:
1)術前検査の造影CTを必須とする。血管の石灰化の有無と程度を確認し、脊椎を矯正することにより、血管の走行が変化するか、事前にシミュレーションを行う。
2)シミュレーションの結果、術中の血管損傷等のリスクを判定し患者へ説明をする。
3)患者への説明時は手術を受ける本人だけでなくキーパーソンにも外来時より説明を行う。説明時には看護師等が必ず同席し、説明の反応と理解度を電子カルテに記録する。
4)説明同意文書には以下の項目について詳細に記載しておく。
・合併症に対する危険度、これまでのデータを用いる。
・緊急時の対応について、当院で処置困難と判断した場合は近隣の専門施設へ転院搬送となること。