医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDAD0269434288A8A97
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2019火曜日平日12:00〜13:59
医療の実施の有無事故の程度
実施なし死亡
事故の概要発生場面 事故の内容
治療・処置実施その他の治療・処置の実施に関する内容 術中破裂
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
その他 ハイブリッド手術室
その他 なし
入院
1人
40歳代 (男性)
麻酔中・麻酔前後
疾患名脳動脈瘤
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師19年0ヶ月19年0ヶ月1回交替勤務なし40脳神経外科学会専門医・指導医、脳血管内治療学会専門医・指導医、脳卒中学会専門医・指導医、脳卒中の外科学会技術指導医
2人 医師22年0ヶ月22年0ヶ月0回交替勤務なし40脳神経外科学会専門医・指導医、脳卒中学会専門医・指導医、脳卒中の外科学会技術指導医
3人 医師15年0ヶ月13年0ヶ月1回交替勤務なし40脳神経外科学会専門医・指導医、脳血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医・指導医
4人 医師7年0ヶ月5年0ヶ月1回交替勤務なし40脳神経外科学会専門医
5人 医師3年0ヶ月1年0ヶ月1回交替勤務なし40
特に報告を求める事例発見者治療・処置の種類
本事例は選択肢には該当しない当事者本人その他の手術 脳血管内治療
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
医療材料・諸物品等1
【販売名】 該当なし
【製造販売業者】 該当なし
【購入年月】 該当なし
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
その他 M&M施設・設備
患者側
その他 予想されうる合併症が併発した
その他 アンギオ装置
事例概要
【実施した医療行為の目的】
未破裂脳動脈の治療。
【事故の内容】
脳ドックで未破裂脳動脈瘤を指摘され前医を受診、精査加療希望で当院へ紹介となった。脳血管撮影による精査で前交通動脈部に4.4mm大の脳動脈瘤を確認し、自然歴、治療法(経過観察、開頭クリッピング術、コイル塞栓術)、リスク(1−3%)の説明を行った後、コイル塞栓術を希望された。入院、再度術前説明として、自然歴、治療法、リスクの説明を行った。その際、リスクとして一番高いのはくも膜下出血であること、また万が一くも膜下出血を併発した場合には1/3の確率で死につながる可能性があること、緊急時にはドレナージや開頭術に必要性があることを説明し、再度治療を希望された。
入院1ヶ月後、全身麻酔下にハイブリッド手術室でコイル塞栓術を施行した。治療は再度3D−rotation angiographyで精査を行った後、一番安全と判断したバルーンを使用したコイル塞栓術を選択した。マイクロカテーテルを動脈瘤内に誘導し、フレーム形成用のコイル挿入を開始、何度かフレーム形成を行っている段階で、コイルが動脈瘤外へ逸脱、同時にマイクロカテーテル自体の動脈瘤外への逸脱が疑われた。すぐにバルーンでプロテクションを行った上、血圧の低下とヘパリンのリバースを行い、動脈瘤外から動脈瘤部へコイルの塞栓を迅速に行った。動脈瘤内外へ十分にコイルを挿入した段階でバルーンをデフレートしたが、出血のコントロールができておらず、血管内からの出血コントロールは困難と判断した。そのまま開頭術を行う方針とし、再度バルーンをインフレートさせた状態とした。ハイブリッド室であったため、部屋移動やベッド移動は要せず、そのまますぐに開頭を行った。開頭すると脳浮腫が著明であり、脳深部より持続性に出血を認めている状態であった。迅速に前頭葉と側頭葉の一部に内減圧を行い、内頚動脈の確保を行った上、テンポラリークリップで血流コントロールを行った。その上で、前交通動脈部へアプローチした。出血は脳動脈瘤部のみでなく、前交通動脈部からも認めていた。動脈瘤部のみのクリップでは止血は困難な状況であり、脳動脈瘤部に加え、前大脳動脈を脳動脈瘤の前後で閉塞させる形でクリッピングを施行した。なんとか止血を行い得たが、脳浮腫は著名な状態であり、そのまま硬膜形成と外減圧術を施行した。術後CTでは脳全体でも脳浮腫は著明であった。脳圧コントロールの治療をすぐに開始したが、翌日のCTでは脳浮腫の改善は認めておらず、全脳虚血を疑う状態であった。その後血圧が低下傾向となったため、抗脳浮腫の治療を断念し、昇圧剤の治療を開始した。この時点で家族には救命が困難である可能性が高い旨をお伝えした。昇圧剤使用下でも徐々に血圧低下し永眠された。
【事故の背景要因の概要】
小型動脈瘤への塞栓術であり、もとよりリスクとしては高いタイプであった。予定通りコイル塞栓を行っていたが、コイルとカテーテルが動脈瘤の頚部近傍より動脈瘤外へ逸脱し、緊急手術となった。
【改善策】
今回のコイル塞栓術はハイブリッド手術室において全身麻酔下に施行していた。破裂のリスクを考慮し、手技上はバルーンによるアシストを行っていた。破裂が確認された後は、コイルやバルーンによる出血コントロールを行いつつ、開頭が必要と判断した段階で速やかに開頭術へ移行した。手術室内には開頭術に対応するための顕微鏡があらかじめ常備されており、今回は部屋の移動も必要とせず、短時間で緊急開頭術に対応することができた。治療室の設備、術者の体制、看護の体制、麻酔科の体制、緊急時への対応等に関しては想定される事態に対する準備がなされており、また実際の緊急対応もできていたと考えられる。一方で、ハイブリッド室のアンギオ装置事態はシングルプレーンであり、昨今導入が推奨されているバイプレーン装置ではなかった。破裂の要因として、動脈瘤内でのコイル挙動も考えられる点からは、バイプレーン装置の導入により今回の事案は回避出来ていた可能性はある。