医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDAA78AB5920A0B9320
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2022月曜日平日12:00〜13:59
医療の実施の有無事故の治療の程度事故の程度
実施あり濃厚な治療死亡
事故の概要発生場面 事故の内容
治療・処置実施その他の治療・処置の実施に関する内容 合併症
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
手術室
麻酔科
整形外科
その他 救急救命科
入院
1人
70歳代 (男性)
薬剤の影響下
麻酔中・麻酔前後
疾患名腰部脊柱管狭窄症
高血圧
糖尿病
高脂血症
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師31年8ヶ月6年8ヶ月0回交替勤務なし39麻酔科認定指導医、麻酔科専門医
特に報告を求める事例発見者治療・処置の種類
本事例は選択肢には該当しない同職種者全身麻酔(吸入麻酔+静脈麻酔)
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
看護師
臨床工学技士
診療放射線技師
医療材料・諸物品等1
【販売名】 該当なし
【製造販売業者】 該当なし
【購入年月】 不明
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
その他 医療安全委員会で症例検討会判断を誤った
技術・手技が未熟だった
医薬品
患者側
教育・訓練
事例概要
【実施した医療行為の目的】
腰部脊柱管狭窄症にて手術予定であった患者の麻酔導入時、静脈麻酔、筋弛緩薬投与後、心電図波形が変化した(ST上昇)。その後急変し、心肺蘇生を行った。その後、腹腔内出血を認め、IVRを行ったが当日死亡した。
【事故の内容】
手術3日前11時00分、腰部脊柱管狭窄症の手術目的で独歩にて入院する。
手術当日13時00分、独歩で手術室に入室する。
同日13時08分、右前腕静脈ルートよりプロポフォール、レミフェンタニル、ロクロニウム静脈注射施行し、麻酔導入開始する。
同日13時10分、喉頭鏡にて挿管する。カプノメータ確認も波形出ず。心電図ST上昇あり。
同日13時13分、マックグラスにて再挿管するもカプノメータで波形出ず。血圧70台に低下する。そのため昇圧剤使用する。
同日13時15分、血圧測定できず。心電図波形PEAにて緊急コール実施する。
同日13時16分、胸骨圧迫開始する。ボスミン1A静脈注射する。
同日13時18分、心電図波形 接合部調律(Junction)PACで脈拍触知できず。胸骨圧迫再開する。ボスミン1A静脈注射する。
同日13時19分、EtCO2:20以上を確認する。
同日13時20分、心拍再開する。
同日14時03分、冠動脈評価のためカテーテル室へ移動する。冠動脈造影施行する。左前下行枝(LAD)に中等度の狭窄を認めるのみ右冠動脈(RCA)には有意狭窄なし。カテコラミン投与しても循環維持できない状態であった。
同日15時30分、PCPSに接続するもPCPS回路回らなかった。
同日16時31分、出血精査のため、CT施行する。腹腔内出血を認め、IVR方針となる。
同日17時25分、カテーテル室へ入室する。右胃動脈と固有肝動脈分枝へ塞栓する。
同日19時10分、救命病棟へ入室する。その後、死亡確認する。
【事故の背景要因の概要】
1.患者は血糖コントロール目的で手術の3日前に入院した。
2.手術前の十二誘導心電図は脈拍63回/分、洞調律であった。
3.心電図変化からは右冠動脈(RCA)の冠攣縮による下壁心筋梗塞を起こしたと思われる。しかし、心カテーテルの結果は左前下行枝(LAD)に中等度の狭窄を認めるのみ右冠動脈(RCA)には有意狭窄なしとの結果であった。
4.麻酔導入時には薬剤性、またストレスで冠攣縮を起こすことがある。
5.麻酔導入時、1度目の気管内挿管はカプノメータの値がでなかったため、食道挿管を疑い再挿管し直した。
6.腹腔内出血を起こした原因としては胸骨圧迫による合併症が考えられる。
7.IVR時の所見では右胃動脈、固有肝動脈、左胃動脈からの出血が認められた。
8.また胸腹部造影CTでも右肋骨骨折、気胸、肝門部出血、左右胃動脈損傷が認められた。
9.患者の体型は160.2cm、体重79.2kg、BMI:30.86 である。胸骨圧迫を行っている間に腹部の方向に圧迫部位がずれ、腹部に鈍的損傷を与えた可能性がある。
10.麻酔科のASA分類は3で評価していた。麻酔の説明書、同意書には麻酔による合併症として「麻酔が原因の術中、術直後の麻酔科学会偶発症報告による死亡率は0.003%」と記載されており説明も行っている。
【改善策】
1.麻酔導入時のST上昇、冠攣縮は麻酔の合併症として予測するのは難しい。しかし、合併症に1つとしてあることを情報共有し今後に活かす。
2.胸骨圧迫は正しい方法で行う。職員が定期的に研修できるよう機会を設ける。