医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDA97DF86F8CC6601D8
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2023木曜日休日・祝日16:00〜17:59
医療の実施の有無事故の治療の程度事故の程度
実施あり軽微な治療障害残存の可能性がある(低い)
事故の概要発生場面 事故の内容
ドレーン・チューブ使用中その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 肺損傷
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
その他 放射線科透視室
呼吸器内科
入院
1人
70歳代 (男性)
その他特記する心身状態あり 労作時呼吸困難
疾患名左気胸
慢性閉塞性肺疾患(COPD)3期
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師27年9ヶ月8年9ヶ月0回交替勤務なし41日本外科学会専門医
日本静脈管学会専門医
特に報告を求める事例発見者ドレーン・チューブの種類
本事例は選択肢には該当しない同職種者胸腔ドレーン
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
医療材料・諸物品等1
【販売名】 トロッカカテーテル 2ルーメンタイプ Bタイプ 22Fr
【製造販売業者】 SBカワスミ
【購入年月】 不明
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
その他 事故対策会議患者側
その他 機種化著明・肺の状態不良
事例概要
【実施した医療行為の目的】
左気胸の治療のため
【事故の内容】
○月29日COPDで通院中の患者が呼吸困難のため救急受診。CT上左気胸を認めた。酸素3リットル投与で酸素飽和度92〜93%、起座呼吸。
当直の血管外科医師より家族にCTを見せながら気腫肺の問題、気胸の状態、挿入時の臓器損傷等の合併症、今後の問題点説明。経過観察又は胸腔ドレナージの治療につてい説明し、家族は胸腔ドレナージ挿入を強く希望。当直医師は、肺の虚脱の程度(スペース約2cm)より経過観察でもよいと考えたが、呼吸困難が出現していたため胸腔ドレナージを挿入する方がよいと判断した。
○月29日16時 透視下で挿入部位を確認しマーキング実施。イソジン消毒後1%キシロカインで局所麻酔施行、エアが引けることを確認した。皮膚・筋肉を剥離して胸腔内に22Frダブルルーメンが達したのを確認した。ドレナージチューブを透視下で挿入。肩の痛みなし。固定して処置は終了した。問題となるような出血なし。−3でドレナージ開始。エアリークは呼吸性に少しあり、連続性にはなし。家族にもドレナージ終了の説明を行った。ドレナージ終了後病棟へ搬送。酸素飽和度97%。胸腔ドレーントラブルなし。
○月30日 呼吸困難感持続。酸素飽和度95〜96%。リーク持続。来院時よりは呼吸困難感軽減していたが、その後も呼吸困難感は持続していた。リーク持続。
翌月5日、6日、自己血癒着術施行。12日胸膜癒着術施行。リークは改善せず。
翌月17日 リークが消失しないため10日に撮影したCTを複数の医師で確認していたところ、ドレーンが肺内を貫通していることが発覚(後日確認すると放射線科医師も気付きにくいと言われた。読影でも気付いていなかった)。18日20Fr胸腔ドレーン再挿入。リーク持続。
翌月20日 自己血癒着術3回目実施。リーク持続。23日50%ブドウ糖による癒着術施行。呼吸性移動減少、一時的に呼吸困難出現したが改善。
翌月24日クランプテスト実施し、X線上気胸の悪化なし。癒着術成功と判断しCT撮影後ドレーン抜去。
【事故の背景要因の概要】
・受診時の肺の虚脱の程度は大きくなく、ドレーン挿入のスペースも約2cmと狭かった。しかし、呼吸困難が出現していたため気胸の進行を予測してドレーンを挿入した判断は誤っていたとはは言えない。
・ドレーン挿入後は来院時より呼吸困難感は減少し、呼吸状態は安定していた。胸腔ドレーンが肺内に誤挿入していることを疑うような症状はなかった。
・術者は十分なドレーン挿入の経験があり、スペースが狭い状態でのドレーン挿入のリスクについては十分予測していたと言える。家族に対しても個別のリスクを十分説明し同意を得ていた。
【改善策】
・肺の虚脱の程度が大きくなくドレーン挿入のスペースが狭い場合は、患者の症状に応じて経過観察し、数時間後にCTで再評価することも検討する。