医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDA5A217B9D65E0C0FD
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2017木曜日平日10:00〜11:59
医療の実施の有無事故の治療の程度事故の程度
実施あり濃厚な治療死亡
事故の概要発生場面 事故の内容
検査実施中その他の検査の実施に関する内容 鎮静薬剤
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
放射線撮影室
消化器科
入院
1人
60歳代 (男性)
薬剤の影響下
疾患名閉塞性黄疸
膵臓がん疑い
自己免疫性膵炎疑い
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師6年3ヶ月3年4ヶ月1回交替勤務なし57日本内科学会認定内科医
特に報告を求める事例発見者検査の種類
本事例は選択肢には該当しない他職種者上部消化管
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
看護師
医療機器等1
【販売名】 不明
【製造販売業者】 オリンパス
【製造年月】 不明
【購入年月】 不明
【直近の保守・点検年月】 不明
医療材料・諸物品等1
【販売名】 なし
【製造販売業者】 なし
【購入年月】 なし
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
外部調査委員会設置(予定も含む)患者への説明が不十分であった(怠った)
判断を誤った
知識が不足していた
事例概要
【実施した医療行為の目的】
閉塞性黄疸、膵頭腫大があり、減黄および膵臓がんと自己免疫性膵炎の鑑別診断をする目的でERCP(逆行性膵胆管造影)を実施した。
【事故の内容】
ロヒプノールによる鎮静下でERCP施行中に、突然の呼吸停止、心停止が出現し、CPRを行うも低酸素脳症となった。その後も治療の甲斐なく状態は徐々に悪化し、播種性血管内凝固、多臓器不全を来し死亡した。
【事故の背景要因の概要】
ロヒプノールに対する併用薬剤の影響:ロヒプノールの添付文書の相互作用のところに、併用注意薬剤としてシメチジン(酸分泌抑制薬)に関する記載がある。そこには「シメチジンが肝チトクロームP450を阻害し、本剤の排泄を遅延させるおそれがある」「本剤の中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある」とある。本事例ではタガメット(シメジチン)が処方されており、検査当日の朝、内服薬継続の指示があり、自己管理していたパーキンソン病治療薬と一緒にタガメット200mg1錠を内服したと思われる。タガメットとロヒプノールの相互作用によりロヒプノールの血中濃度が上昇して中枢神経抑制作用が増強され、呼吸抑制を来した可能性がある。
鎮静剤の使用方法:消化器内科の中で定められたルールがなく、担当する医師の裁量により鎮静剤の投与が行われている。ペンタジン(ペンタゾシン)のような鎮痛効果のある薬剤やプレセデックス(デクスメデトミジン、催眠・鎮静薬)のような呼吸抑制の少ない薬剤を併用するなど、ガイドラインに準拠した鎮静剤の投与方法について消化器内科で検討する必要があった。
ERCPおよび一連の検査や処置の説明:検査の目的や方法、膵炎などの重篤な合併症を来すことがあるとの説明が既存の説明用紙を用いて行われ、患者本人が同意書に署名しているが、鎮静剤の説明がされていなかった。
本事例は鎮静剤投与下でERCPおよび一連の検査と処置を施行し、検査終了直前に重篤な呼吸や循環動態の異常を来し、心肺蘇生術を行うも効果乏しく低酸素脳症となった。その後も治療を行ったが回復することなく、血管内凝固症候群、多臓器不全を併発して約2週間で死亡するに至った。呼吸や循環動態の異常を来した原因について当初は、検査中、終始体動があり、急変後にアネキセートを投与しても回復しなかったことより過鎮静ではなく、また他の器質的疾患も認めなかったことから不明と考えていた。しかし、事後の検証では、タガメットとの相互作用によりロヒプノールの血中濃度が通常以上に上昇して鎮静作用が増強したことにより、呼吸抑制を来した可能性があると考えるに至った。
【改善策】
1.検査で使用する鎮静剤の説明と同意書の作成
2.鎮静剤の投与方法の検討
検査中に鎮静目的で使用する薬剤の種類や投与量、投与用法などについて、消化器内科内で検討した。ペンタジンなどの鎮痛剤やプレセデックスのような呼吸抑制の少ない鎮静剤を併用。また、使用する鎮静剤の他剤との相互作用にも留意した対応とする。
3.カプノメーターで呼吸状態を監視
酸素投与下では、呼吸停止からSpO2モニターが低下してアラームが鳴るまでに時間がかかり、対応が遅れる危険性がある。鎮静剤投与下にあり、かつ酸素投与している事例や慢性呼吸不全の患者では、カプノメーターを装着して呼吸状態を監視することを勧める。
4.患者状態を観察しやすい環境作り
検査施行医師が患者の顔の前に位置するため、腹臥位の患者の表情や呼吸状態を看護師が観察しにくい状況にある。看護師配置を2人体制として観察と処置の強化をした。心電図のモニタリングの配置など、モニターを含めた患者の状態把握に専心できる環境とした。
5.異常発生時に的確に対応する体制づくり 
検査中に異常事態が発生したら、最悪の事態を想定し、検査を中断してすぐに患者の救命にあたる。起きている状況を冷静に判断し瞬時に的確な対応ができるよう、経験のある医師が常に検査の傍らで待機する体制とした。