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医療事故情報
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公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
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報告年 | 発生曜日 | 曜日区分 | 発生時間帯 |
2018 | 火曜日 | 平日 | 10:00〜11:59 |
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医療の実施の有無 | 事故の治療の程度 | 事故の程度 |
実施あり | 濃厚な治療 | 死亡 |
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事故の概要 | 発生場面 |
事故の内容
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治療・処置 | 実施 | その他の治療・処置の実施に関する内容 手術部位以外の臓器損傷 |
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発生場所(複数回答可) | 関連診療科(複数回答可) | 患者の数 | 直前の患者の状態(複数回答可) |
その他 HCU
| 外科
| 入院
1人
90歳代
(男性)
| 薬剤の影響下
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当事者 | 当事者職種 | 職種経験 | 当事者部署配属期間 | 直前1週間の
当直・夜勤回数 | 勤務形態 | 直前1週間
の勤務時間 | 専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格 |
1人
| 医師 | 20年8ヶ月 | 2年8ヶ月 | 1回 | その他 当直制 | 40 | |
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特に報告を求める事例 | 発見者 | 治療・処置の種類 |
本事例は選択肢には該当しない | 当事者本人 | その他の手術 鏡視下・開腹・開腹 |
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医療材料・諸物品等1 |
【販売名】 該当なし
【製造販売業者】 該当なし
【購入年月】 該当なし
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事故調査委員会設置の有無 | 発生要因(複数回答可) |
既設の医療安全に関する委員会等で対応 | 観察を怠った
判断を誤った
技術・手技が未熟だった
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事例概要 |
【実施した医療行為の目的】
2月より胆石性胆嚢炎のためPTGBDチューブ挿入し経過観察していた。チューブ管理困難及び本人の手術希望あり腹腔鏡下胆嚢摘出術施行となった。
【事故の内容】
他院より胆石性胆嚢炎で紹介。保存的治療で症状改善見られず、PTGBD施行。PTGBD造影。胆嚢管、総胆管は造影されず。PTGBD挿入し外来フォローしていたが、カテーテル閉塞等カテーテル管理困難あり。また、患者より手術希望あり。CTにて胆嚢周囲の肥厚、炎症改善見られず。全身状態を評価し、手術の方針となった。
入院。
腹腔鏡下胆嚢摘出術施行。胆嚢の炎症性癒着は予想通り強固であった。そのため、癒着剥離時に十二指腸球部前壁損傷し、腹腔鏡下に修復しドレーン留置。術後HCU入室。
手術後1日目、ドレーンより胆汁様排液あり。WBC32000。バイタルサイン変化なく、観察。
手術後2日目、夜間熱発あり。
手術後3日目、朝には解熱。同日CT施行。胆嚢周囲の液体貯留認めたが、他の部位には広がらず、限局性の胆汁性腹膜炎。WBC26000、CRP22.9。
手術後4日目、ドレーンより血性排液あり。Hb8.9と軽度貧血進行。ダイナミックCT施行。動脈性の出血を疑う所見なし。胃内に血腫の貯留あり。その後コアグラ嘔吐あり。家族へ病状を説明し、緊急止血手術または保存的治療継続を提示したところ、高齢や呼吸機能を理由に保存的治療を希望。輸血と抗生剤での保存的治療開始。
手術後7日目、内視鏡施行。十二指腸前壁の縫合不全、瘻孔を確認。クリップかけたが寄せる距離ではなく、断念。イレウス管を十二指腸に留置し、持続吸引開始。
手術後10日目、発熱なく全身状態安定したためCV挿入し、TPN管理開始。以降も徐々に進行する貧血に対し、適宜輸血と抗生剤セフォンで保存的治療継続。
手術後12日目、吐血あり。感染徴候再燃。WBC24800。血培採取後、抗生剤MEPMへ変更。保存的治療で膠着状態であり、貧血の進行や発熱、炎症の再燃繰り返す状態であり、状態安定しているうちの再手術を家族へ提案。
再手術。出血に対し、洗浄止血ドレナージ、腹膜炎手術施行。縫合不全部を大網被覆、ドレナージ。
再手術後2日目、凝固13因子測定40%。
再手術後3日目、39℃の熱発、血培、ドレーン培養施行。カテーテル感染も疑い、TEICと抗真菌薬開始。培養結果でカンジダ検出。TEICは感受菌なく中止。
採取術後6日目、熱発あり、培養再検。
再手術後7日目、培養結果でマルトフィリアを検出。抗生剤をMEPMからセフェピムへ変更。カンジダ消失、プロジフ終了。
再手術後12日目、瘻孔造影・ドレーン入れ替え施行。まだ瘻孔は広かった。夜間ドレーンから再出血、吐血あり。輸血施行。瘻孔閉鎖のためフィブロガミンP開始。
再手術後14日目、夜間再度出血、多量下血あり。BP80/の血圧低下あり。RCC、FFP輸血施行。家族へ、再手術を行っても止血出来るか不明である旨を説明し、経過観察の方針となる。4時過ぎに再度吐血、血圧60へ低下。再度家族へ病状説明し、術中死の危険も説明した上で、再々手術の方針となる。
再々手術施行。洗浄、血腫除去、胃開窓し、術中内視鏡。十二指腸球部の縫合不全部は観察困難。縫合不全部位への消化液曝露を減らすため胃空腸吻合とブラウン吻合施行。腸瘻造設。出血検索の癒着剥離時、胆摘後の肝床部から出血あり、タコシール貼布。出血量832ml。術中RCC6U、FFP4U輸血施行。術後は、鎮静、人工呼吸管理した。その後徐々に人工呼吸器離脱へ向けて管理。
再々手術3日目、ドレーンよりやや血性混じりの排液あり。人工呼吸器設定CPAPであり抜管を考えていたが、出血予防のため抜管せずに鎮静継続。夕方頃から全身浮腫状、尿量低下あり。
再々手術4日目、ドレーンより出血あり、血圧低下。家族へ病状説明し、これ以上の積極的治療は行わない事となる。
再々手術5日目、腹腔内出血にて死亡。
【事故の背景要因の概要】
・術前評価において胆嚢周囲の肥厚や胆嚢管、総胆管狭窄があり、胆嚢の炎症性癒着が強いことが考えられ腹腔鏡下での手術は難易度が高いことはわかっていたが、混合性換気障害あり腹腔鏡下胆嚢摘出手術を実施した。
・癒着剥離時に十二指腸球部前壁損傷し腹腔鏡下で修復したが、修復が不完全であった。
・消化液漏出に対してドレナージを行っていたが、腹腔内に貯留した消化液に腹腔内臓器が曝され組織が脆弱となり、再手術時の縫合不全部修復困難や瘻孔閉鎖の遅延に繋がった。
【改善策】
・癒着の強い高度胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は、難易度が高いため胆嚢炎の程度や胆管狭窄に関する画像診断を行い、手術の適応とタイミングを外科カンファレンスにおいて慎重に判断する。
・患者が手術を希望したとしても、手術難易度の高い場合や、手術リスクの高い合併症を有する高齢者では致命的な事態が起こりうることを、患者及び家族が理解できるように説明する。
・胆嚢の癒着剥離困難を認めた場合は他臓器損傷を起こす恐れがあるため、腹腔鏡下手術に固執せず速やかに開腹術へ移行する。
・他臓器損傷修復時は、腹腔鏡下手術より開腹手術に移行し、十分な視野を確保し修復する。混合性換気障害あり、呼吸状態の悪化を招く危険もあったが、再手術・再々手術を考えると確実に損傷部位の修復が確認できる方法を選択する。
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