医療事故情報

公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業

事例IDA1A1F30477C7E4122
報告年発生曜日曜日区分発生時間帯
2019水曜日平日14:00〜15:59
医療の実施の有無事故の治療の程度事故の程度
実施あり濃厚な治療死亡
事故の概要発生場面 事故の内容
治療・処置実施その他の治療・処置の実施に関する内容 術中の機械操作による腹部大動脈損傷
発生場所(複数回答可)関連診療科(複数回答可)患者の数直前の患者の状態(複数回答可)
手術室
整形外科
入院
1人
70歳代 (女性)
歩行障害
麻酔中・麻酔前後
疾患名失血死
腹部大動脈損傷
変性側弯症
当事者当事者職種職種経験当事者部署配属期間直前1週間の
当直・夜勤回数
勤務形態直前1週間
の勤務時間
専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格
1人 医師25年4ヶ月13年4ヶ月0回交替勤務なし49整形外科専門医 脊椎脊髄専門医 脊椎脊髄病医
特に報告を求める事例発見者治療・処置の種類
本事例は選択肢には該当しない当事者本人その他の手術 脊椎手術
当事者以外の関連職種(複数回答可)
医師
看護師
医療材料・諸物品等1
【販売名】 コブエレベータ(スモール)
【製造販売業者】 ニューベイシブ ジャパン
【購入年月】 2013年2月
事故調査委員会設置の有無発生要因(複数回答可)
その他 医療事故調査制度に基づく院内調査委員会判断を誤った
その他 院内および院外連携
事例概要
【実施した医療行為の目的】
変性側弯症のため変性の増強および腰痛の増悪等、症状が悪化傾向(運動障害はなかった)にあり、脊椎固定術が必要であった。前回、他医療機関で行った後方固定術の選択も考えられたが、手術方法を検討するカンファレンスにおいて、変形を治す効果がより大きいこと、感染症等の併発も少なく既に多くの症例を行っていること等の理由で、今回は前方椎体固定術が適していると判断した。患者および配偶者へ手術についての説明を行い同意を得て、脊椎固定術(前方椎体固定術3椎間)L1/2、2/3、3/4の手術を実施した。
【事故の内容】
手術目的にて入院となる。手術は脊椎固定術(前方椎体間固定術3椎間)L1/2、2/3、3/4予定であった。翌日14時21分、手術開始し左側臥位で右進入で行った。第11肋骨を切除し後腹膜進入を行い、L1/2に到達、L1/2椎間の処置を行った後、ケージを挿入しその後同様の操作でL2/3の処置を行った。L3/4にレトラクターを設置固定した。15時47分、L3/4椎間を操作しようとした際の手術器械コブエレベーター(スモール)が前方に滑って出血が起こった。血圧は110mmHg台から急激に30〜40mmHg台に低下する。即座にガーゼパッキングを行い、大量の輸液、輸血投与を行った。この時点で出血点の確認はできなかった。17時、当院からA病院とB病院の心臓血管外科に連絡した。B病院からガーゼ圧迫と輸血の指示があり、当院から心臓血管外科医師及び臨床工学士の派遣を依頼した。17時28分、B病院から心臓血管外科医師2名、臨床工学士2名及び手術室看護師2名が到着しPCPS装着の処置と止血を試みた。術野近傍の大静脈の損傷はなくそれより左側の動脈性の出血とのことであった。20時38分、止血を試みたが止血困難とのことでPCPSにて循環を補助しながら創を閉鎖終了した。21時5分、HR28〜30回/分、徐々に徐脈になる。PCPS継続し挿管したままアンビューバッグにて加圧を行いながら手術室退室となる。21時8分、ICU入室。ICU入室後人工呼吸器装着したが呼吸は同調している。PCPS装着しているが血液量が確保できずHR20回台/分PEA波形で瞳孔散大している。アドレナリン1mgの投与等を行う。待機していた家族が主治医からの説明後に面会する。HR 0、その後死亡確認した。家族へ原因究明の必要があることを説明し同意を得たうえで、翌日病理解剖を実施した。解剖直後の家族への説明は、大動脈を横切する切創があり鋭的なものでの損傷が考えられる。動脈硬化など患者因子による脊椎のアライメントの変化によってちぎれた痕というより鋭的なものでの損傷が考えられた。よって、手術操作による損傷が考えられることを説明した(正式な解剖結果はまだ届いていない)。
【事故の背景要因の概要】
・椎体は楕円形で今回使用した手術器械コブエレベーター(スモール)も楕円形を呈しており、椎体部への手術操作の際にすべりやすかった。また、損傷を生じた部分は最も変形が強い場所で、表面からの深さも通常よりも深かったことも要因と考えられる。
・動脈の位置は術前のMRIや造影CT等の画像で確認しており特に特異的なものではなかったと考えている。しかし、以前手術を受けている場合は血管の可動性が減少している可能性がある。その点に関しては術前の評価は困難だった。
・事故発生時に当院には心臓血管外科がいないため事故発生時にB病院の心臓血管外科へ応援を依頼しつつ圧迫止血処置を行った。要請までに約1時間程度、到着までに30分程度の時間を要し到着後ただちにPCPSが装着され出血部位の検索が行われた。しかし、出血部位の確認と止血はできなかった。事故発生時の院内連携と院外連携のあり方も要因のひとつとなっていると考える。
【改善策】
・整形外科カンファレンスについて
1)術式等について検討を行っていたが記録が参加医師と患者名のみであり検討内容についての記録がなかったため検討内容を音声保存する。
・説明同意について
1)今回、説明に必要とされる項目について記載した同意書を用いラインを書き加える等を行い説明しているが、術式等の詳しい説明のために今後イラスト等でより具体的に説明する。
・手術器具について
1)手術の手順や器具の種類・サイズは通常使用しているものであり術者はこの手術を100例以上経験しているが、実際に今回このような事故が発生しており、手術に使用する器具が危険なものであることを医局会において医師全体で再認識する。
2)また、器具のメーカーにも事例について報告を行い、使用についての注意喚起を依頼する。
・院内連携について
1)手術室チームの機能が最大限に活かされるように個々の役割について認識するとともにチームステップスについて学習する。
2)事故発生後の救命のための「予期せぬ事象により生命の危険が大きい場合の報告対応フロー図」を作成し現場での救命と同時に院内救命検討チームを召集し現場への支援と適切な提案等の対応を行う。
3)手術室での事故発生時の対応についてシミュレーションを行う。
・院外連携について
1)当院にある診療科の医師による救命処置に限界があり心臓血管外科による外科的処置が必要な場合は、当該地域の基幹病院へ依頼することを想定し事前にシミュレーションを行い連携を図る。
2)連携医療機関の連絡先について手術室内に掲示する。
・その他
1)事故調査・支援センターへ医療事故報告を行い、外部委員を含めた院内調査を実施している。再発防止に向け分析・検討を継続している状況である。