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医療事故情報
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公益財団法人日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
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| 報告年 | 発生曜日 | 曜日区分 | 発生時間帯 |
| 2017 | 火曜日 | 平日 | 不明 時刻不明 |
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| 医療の実施の有無 | 事故の治療の程度 | 事故の程度 |
| 実施あり | 濃厚な治療 | 死亡 |
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| 事故の概要 | 発生場面 |
事故の内容
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| 治療・処置 | 管理 | 治療・処置の管理 |
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| 発生場所(複数回答可) | 関連診療科(複数回答可) | 患者の数 | 直前の患者の状態(複数回答可) |
手術室
ICU
| 呼吸器外科
| 入院
1人
60歳代
(男性)
| 麻酔中・麻酔前後
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| 当事者 | 当事者職種 | 職種経験 | 当事者部署配属期間 | 直前1週間の
当直・夜勤回数 | 勤務形態 | 直前1週間
の勤務時間 | 専門医・認定医及びその他の
医療従事者の専門・認定資格 |
| 1人
| 医師 | 26年6ヶ月 | 16年3ヶ月 | 3回 | その他 労働裁量性 | 80 | 胸部外科指導医 |
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| 特に報告を求める事例 | 発見者 | 治療・処置の種類 |
| 本事例は選択肢には該当しない | 当事者本人 | 開胸 |
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医療材料・諸物品等1 |
【販売名】 なし
【製造販売業者】 なし
【購入年月】 なし
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| 事故調査委員会設置の有無 | 発生要因(複数回答可) |
| 既設の医療安全に関する委員会等で対応 | その他 合併症・併発症・偶発症
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| 事例概要 |
【実施した医療行為の目的】
転移性肺腫瘍の切除目的
【事故の内容】
約10年前に肝細胞癌が破裂し、手術が行われ、以後、約8年前と7年前に再発による肝切除、3年前に肺転移部分切除、2年前に両側肺部分切除、1年前に右転移性肺腫瘍切除を施行した。同年4.1cm大の右転移性肺腫瘍が見つかり、手術切除目的に当科に入院した。入院4日目にRt. Metastatic Lung tumor (S2-S6の間、HCC, 4.1cm)の診断で、右側は3回目の開胸、S6-segmentectomy and partial resection of S2を施行した。麻酔時間7時間50分、手術時間 6時間31分、出血量1080mL、輸液量4350mL、尿量900mL、無輸血。術後ICUに入室し、術後覚醒が不良であり、硬膜外を切ったが覚醒をしないため、脳卒中を疑った。術後CT検査で、左大脳半球の広範囲に梗塞所見を認めた。開胸術後であり、硬膜外麻酔など術直後や時間経過から血栓溶解両方の適応はないが、梗塞が広範囲であり、抗凝固療法や抗血小板療法は出血の危険性があり、使用困難なため、エダラボンを使用して脱水にならないように輸液療法を行う方針となった。しかし、脳ヘルニア症状が進行し、誤嚥も合併していたため、朝方、低酸素となり呼吸状態が悪化し、人工呼吸の説明を行った。同意はされなかった。脳ヘルニアの評価のため、術翌日の12時頃、2回目の頭部CT検査にて左脳梗塞は広範囲であり、左中大脳動脈領域に広範囲に低吸収域を認め、前大脳動脈領域にも及び皮髄境界は不明瞭化し、脳浮腫は増悪し、約10mmをこえる正中偏位と脳幹部の圧排を認め、下行性のテント切痕ヘルニアが疑われた。術後の嘔吐から誤嚥性肺炎もあり、低酸素状態は持続し、挿管、人工呼吸器が必要であったが、同意は得られなかった。また、脳外科的に開頭減圧術も考慮したが、全身状態が悪く、内頚動脈領域の梗塞であり適応がないと判断された。また、回復の見込みがないほどに脳の臨床症状(瞳孔散大)が悪化している状況となり、予後が不良である状況を説明し、挿管は行わず、DNARとなり、同日永眠された。
【事故の背景要因の概要】
・これまでに、一過性脳虚血、脳梗塞、心房細動などの既往はなく、10回の全身麻酔、手術を行っており、術後合併症などもなかった。
・1ヶ月前に4.1cm大の右転移性肺腫瘍が見つかり、手術切除目的に当科に入院し、入院4日目にRt. Metastatic Lung tumor (S2-S6の間、HCC, 4.1cm)の診断で、右側は3回目の開胸、 S6-segmentectomy and partial resection of S2を施行した。術後ICUに入室した。術前Hb 14.3, 術後Hb10.1。手術の体位は、左側側臥位、右側を開胸、手術の既往による胸腔内の癒着があり、出血量は1080mLと多くなったが、術中に低酸素となるような大出血もなく、麻酔管理において、低血圧状態などはなかった。
・術後覚醒が不良であり、硬膜外を中止したが、覚醒をしないので、覚醒遅延か、脳卒中を疑った。
・術後CT検査で、左大脳半球の広範囲に梗塞所見を認めた。開胸術後であり、硬膜外麻酔など、術直後や時間経過から血栓溶解両方の適応はないが、梗塞が広範囲であり、抗凝固療法や抗血小板療法は、出血の危険性があり使用困難であり、エダラボンを使用して、脱水にならないように輸液療法を行う方針となった。脳梗塞は、手術中に発生したものと推察された。
・翌日の神経所見は、左瞳孔が散大し、脳の神経症状の進行が疑われ、脳CT検査を行ったが、脳ヘルニア症状が進行した。
・術後に嘔吐を何回か認め、誤嚥も合併していたので、朝方に、呼吸状態が悪化し、低酸素状態となり、高濃度酸素を投与した。
・呼吸状態の維持のため、再挿管と人工呼吸の必要性の説明を行った。
・家族(本人の妻)の母が約3年半、脳梗塞で人工呼吸状態・気管切開処置であったことがあり、病態は十分理解はされていたが、同意はされなかった。
・脳ヘルニアの評価のため、術翌日の12時頃、再度2回目頭部CT検査では、左脳梗塞は広範囲であり、左中大脳動脈領域に広範囲に低吸収域を認め、前大脳動脈領域にも及び、皮髄境界は不明瞭化、脳浮腫が増悪し、約10mmをこえる正中偏位を認め、浮腫の増悪により、脳幹部の圧排を認め、下行性のテント切痕ヘルニアが疑われた。
・術後の嘔吐から、誤嚥性肺炎もあり、低酸素状態は持続し、挿管、人工呼吸器が必要であったが、同意が得られなかった。
・左内頚動脈閉塞により内頚動脈領域の梗塞をきたし、内頚動脈狭窄がもともとあって、急性閉塞をきたしたか、塞栓源があって塞栓をきたしたかなどが考えられるが、判別は困難であった。
・脳梗塞はいつでも発症する可能性があり、今回は、偶発的に麻酔終了までの期間に脳梗塞を発症したものと考えられた。
・脳腫脹が強く、梗塞の範囲が極めて広く、脳幹の障害をきたしているため、外減圧の適応はないと考えられ、このまま経過した場合は、数時間以内に呼吸停止、心停止をきたす可能性があり、気管挿管、人工呼吸器管理をした場合、数日維持できる可能性はあると判断したが、家族としては、気管挿管、人工呼吸器管理を希望されなかった。
・転移性肺腫瘍の切除の手術中に、広範囲の左大脳半球の脳梗塞が発生し、術後に判明したが、全身状態が悪化し、救命できずに死亡した。
・術前説明同意書には、脳梗塞の発症と死亡のリスクが高いことが説明されていた。
・広範囲脳梗塞の予後が不良と挿管・人工呼吸器装着の同意が得られず、死亡が予測された。
【改善策】
・大動脈石灰化軽度、糖尿病や心電図不整脈などの脳梗塞のリスクがなくても、複数回の手術歴のある患者は、脳の評価も追加する。
・肝臓癌が基礎疾患で、転移性肺腫瘍を認める患者は、全身評価として、頭部MRI検査を追加する。
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